Yes Second Life

セカンドライフ向けWebサービスを作ってました。このブログではVR・メタバースのことを書いていきます

現役セカンドライファーが見ている世界、昨今の言説をみて思うこと

ネットで話題になるのは「セカンドライフの中は、まだこんなにひどかった」みたいなブログ記事ばかりで、いささか残念なんですが、あれはネタでやってる面もあるので、細かいツッコミを入れても仕方ない気もします。

むしろ、昔セカンドライフの悪い点をあげた記事に、顔を真っ赤にして反論してしまってるのが、かえって印象を悪くしてたような気がします。

だから、いちいち挙げられた点に反論するより、なぜぼくがいつまでもセカンドライフをやっているのか、どこに可能性を感じているのか書いてみたほうがいい気がしてきました。

1,Yahoo、Googleになれるチャンス

今、ネットで「オレはYahoo、Google級のサービスを作ってやる」とか言ってる人は現実を見たほうがいいです。ネットは初期に成功した企業が大きな力をつけて業界はもう固まってしまいました。大きいプラットフォームをつくろうと思っても、もはや不可能なので、「ニッチをねらう」ことが、ネットサービスのセオリーにすらなっています。

逆に仮想世界は、それ自体がなくなってしまう可能性もありますが、Google級のサービスをつくれる可能性もたしかにあります。自分で未踏の地を切り開くのは大変ですが、力のある人なら、これほどやりがいがあることもないと思います。

この可能性の大きさが仮想世界の魅力です。

2,コンテンツは仮想世界でしか売れなくなる

こちらは、ちょっと具体的なこと。ぼくが仮想世界で描いてるビジョンの中でも、とりわけ大きな話です。笑う人もいるかもしれないですが、まじめに考えてます。

いま、コピーフリーなネットがコンテンツ産業を破壊する問題は、いよいよ切羽詰まったところにきています。どんなにコンテンツを作ってもコピーが容易になったため、新たなビジネスモデルを考えなければいけないと、みんな言っています。しかし、結局出てくるモデルは「コンテンツを囲い込んで課金する」という、技術の進歩によってできるようになったことをあえて制限するような、退行したものばかりです。

「できることをあえて制限する」「今までできてたことをできなくする」そんな後ろ向きな解決を選びつつあるのが現状ですが、ぼくは、まったく新しいビジネスモデルを作って前向きに解決することができると考えています。そしてそのカギは仮想世界にあります。

ちょっと考えてみてください。コンテンツを売る前向きな解決策として、「ライブで収益をあげる」という考え方があります。ライブの体験はコピーできません。グッズを売るのももちろんそうですが、家でいつでもコンテンツを消費するのとは違った、そのときしかできない体験にお金を払ってもらうわけです。

ぼくは、これはすばらしい解決策だと思います。しかし、残念ながらこのモデルが成り立つのは東京だけなのです。よほどの大手でないかぎり、ライブは東京でしか行われないので、地方の住民は移動コストというハンデがあるのです。では、この移動コストがなくなったらどうでしょうか?

仮想世界でヴァーチャルライブを行い、自宅の部屋から参加する

これが、コンテンツ問題を前向きに解決できる、唯一の解だとぼくは考えています。そして、これを実現するには色々やらないといけないことがあります。

  • HMD、脳波コントローラ、ヘッドセットなど没入型インターフェースの普及
  • 仮想世界の安定性の向上
  • 日本的デザインをもっと作りやすく(メッシュインポートでかなり改善された)
  • 表情連動などの機能追加

まだまだハードルは高いですが、ヴァーチャルライブの台頭は、仮想世界の勃興だけでなく、コンテンツ問題の解決にもつながり、いつかはこの流れがくると思っています。

リアルな人間じゃなくアバターでいいのかという人もいると思いますが、もともとアイドルなんかは偶像なわけでアバターのほうが都合がいい面もあります。またリアルの生々しさがないぶん、3Dエフェクトみたいな仮想世界でしかできない演出というのもあります。

好きな音楽をデータでなく仮想世界上の生の歌手から聞く。尊敬してるイラストレータの絵をみるだけでなく仮想世界上で自分の似顔絵を描いてもらう。未来の有料コンテンツはすべてライブ化します。なかでも、「声優のボイスチャット+キャラクターのアバター」で行うライブはキラーコンテンツになるでしょう。

未来をみてほしい

今回ぼくが書いた話は荒唐無稽に聞こえるかもしれません。まだ実現してない先のことを語っているのでしかたないのですが。

セカンドライフがネットで話題になるとき、こんなにしょぼい、すぐ落ちる、みたいな感じになりますが、ぼくもそう思います。現状の仮想世界はしょぼすぎる。でも未来もそうだとはおもいません。セカンドライフメッシュインポートなど、様々な進歩をしています。

ネットの言説は、仮想世界がいつまでも進化しないとおもって書かれたものが多いです。未来にどうなっているのか、未来の仮想世界をどうしていくのか。そういった建設的な話をみてみたいです。

AR in VR カソウセカイカメラをリリースしました

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まったく手応えがないままに、セカンドライフ向けサービスを作り続けているわけですが、ついに第3のサービスをリリースしました。

ARとVRの先端技術を組み合わせれば、とにかくすごいんじゃね? という安易な発想のもと、仮想現実の中で拡張現実が楽しめるものがいいだろうということで、できたのがカソウセカイカメラです。

カソウセカイカメラ
http://www.kasousekaicamera.com/

詳しくは、発表会の資料をご覧ください( ̄∇  ̄ )

なぜ今仮想世界なのか?セカンドライフに訪れた3つの変化

セカンドライフ

セカンドライフに人生を賭けるという、人生最大の失敗を犯してから、4年が経ちました。

しかし、石の上にも三年とはよく言ったもので、最近は仮想世界の可能性を感じさせる変化が見られるようになってきました。今回は、最近のセカンドライフに起こった3つの変化を紹介します。

変化1 一般的な3DCGをそのままインポート可能に

長い間、セカンドライフは"プリム"と呼ばれる単純な図形を、複数リンクさせることで複雑なオブジェクトを作成する制作スタイルを貫いて来ました。これは初心者には作りやすくていいのですが、3DsMax、Maya、Blenderなどの高度なツールを使いこなせる上級者からみると、もどかしい部分がありました。しかし、今年の8月、リンデンラボはメッシュインポートという機能をリリースし、一般的な3DCGで使われるCollada形式の取り込みを可能にしました

Colladaは非常に一般的な形式なので、変換ツールなどを使えば、世にあるほとんどの3DCGは取り込むことができます。3Dモデルをアバターとして使うことも可能で、MMDモデルなんかもColladaに変換してボーンとの関連付けをやりなおせば、インポートして自分のアバターにできます。MMDのダンスデータもセカンドライフの形式に変換するツールがあるので、まさにニコニコ動画MMDを踊らせてる動画のようなことを、セカンドライフでも再現できます。しかも眺める側でなく踊る側でです。

変化2 メタバース連動Webサービスの台頭

オブジェクトを作ってそれにスクリプトを仕込む程度の制作物が長い間主流になってましたが、最近はWebとうまく連携させた制作物が増えてきました。元々、セカンドライフスクリプトであるLSLには、HTTPを扱える関数があるので、外部のWebサイトとの連携が可能だったのですが、ようやくそのノウハウがたまってきたようです。

セカンドライフは、人が集まってる時間帯がわかりづらく、ログインしても誰もいないということがよくあったのですが、それを解決するために生まれてきたのが、次に紹介する「すりんく」や「LIVES」のような、今盛り上がっているところを探すサービスです。

すりんく すりんく
すりんくが配布しているオブジェクトを自分の運営するカフェなどに設置すると、センサースクリプトが今まわりにいるユーザ数をカウントします。そして、HTTPでサーバに転送し、人がいる場所をトップページヘ表示する仕組みになってます。

 

LIVES LIVES
すりんくに仕組みが近いですが、にぎわってる場所をWeb上で確認するのではなく、自分のアバターの周りに近未来っぽく展開します。

エンターテイメント向けのサービスもあります。セカンドライフは自由すぎて目的がないとは、よく言われてきましたが、目的をリンデンラボではなく、クリエイターが作り始めています。

クリエモン クリエモン
目、鼻、口などの表情パーツをWeb上で投稿・共有し、それらを組み合わせて自分のアバターの表情を作れるサイトです。お気に入りに登録した表情は、セカンドライフ内のガジェットにロードできます。"セカンドライフ萌えおこし"が、ミッションらしいです。

 

クエストマイスター クエストマイスター
Web上で情報を入力して、専用のストーンをセカンドライフに設置するだけでクエストが作れるサイトです。クリア条件をLSLスクリプトで設定することも可能なので、工夫次第でいろんなクエストが作れます。

"人が集まってるところが分からなくてログインしても誰もいない" "自由すぎて遊ぶ目的がない" みたいな、バブルの頃によく言われていた欠点が、Webを上手く活用することで解決されつつあります。ちなみに、上記の4サイトは、企業ではなく、どれも個人クリエイターが製作しています。つか、下2つは僕が作りました。

変化3 ビジネス目的の企業が撤退

セカンドライフで儲けたいみたいな企業は大抵撤退しました。まだいくつか企業も残ってますが、セカンドライフバブルにのっかりたいというよりは、自分たちの力で面白くしてやろうという志の高いところが残ってる感じです。

世の中では、企業が撤退してクリエイターの天国になっているみたいな認識をしている人も多いですが、クリエイター以外の人も多いです。セカンドライフのユーザを乱暴に3つに分けると次のような感じになります。

  • アバターの着せ替え機能を活用する、ファッション好きのユーザ
  • セカンドライフを高度なチャットツールとして活用する、おしゃべり好きのユーザ
  • 仮想世界での制作に魅了されたクリエイター

セカンドライフは女性ユーザが多いと言われますが、やっぱりファッション、チャット目的のユーザが大半で、クリエイターは少数派です。しかし、少数だからこそ、制作能力のある人は非常に重要視されますし、活躍の場は多いです。ネットの個人サービスはもう飽和してしまって、一週間くらい流行って終わりみたいな感じになっちゃってますが、セカンドライフなら、個人でも仮想世界を代表するようなサービスを作るチャンスがあります。ビジネスの人達がいなくなった今こそ、個人制作の面白いサービスがでてくる下地ができたといっていいでしょう。

オフィスアワー会場 毎週月曜日の22時から、セカンドライフで意識の高い()ユーザの集まりをやってるので、ここまで読んで、興味が湧いた人は、よろしければ一度話を聞きにいってもおもしろいとおもいます。
集合場所(セカンドライフ
http://maps.secondlife.com/secondlife/Trinity/12/138/22