この記事は、セカンドライフ技術系アドベントカレンダー2020の、25日目の記事です。
前編に引きつづき、こんかいはVRでソフトを作る際の具体的な注意点について考えていきます。
没入感をさまたげない
VRの世界はいくらリアルに作られているとはいっても、現実世界ではないということはよくみればわかります。それを脳が補完して実在の世界に入っているような感覚を味わうことができます。
気を散らすような演出をして脳の注意を逸らすと、この没入感がきえてしまいます。以下のようなことは、あまりしないようにしましょう。
- アラートやメッセージを頻繁にだす
- 過剰なHUD
- PAUSE機能で画面を停止させる
NPCは使わない
VRでながらく人気があるソフトというと、どのようなものを思い浮かべるでしょうか。
人気ソフトの一角として、ビートセイバーや、The Climbのような、基本的にひとりで世界に入って遊ぶタイプがあります。だれにも邪魔されることがないので、深く世界に没入することができます。
またそれとは対極的に、VRChatのようにたくさんの人が集まるタイプのソフトもVRで重要な位置をしめています。
しかし、NPCが重要なポジションをしめている人気ソフトというのはあまり見当たりません。
これは自分の思う仮説なんですが、今のAIレベルでNPCを作成するといかにも作り物といった感じがでてしまい、仮想世界への没入感をそいでしまうのではないかとおもいます。
個人的には、NPCは視覚、聴覚をもって、視界の変化や音に反応して動作をかえるぐらいまでいかないと使いものにならないとおもっています。
VR特有の制限を逆手にとるべし
テレビゲームはあくまで「あちら側の世界」、自分の体とは分離されているためあちらのキャラクターは、ゲームパッドで自由に動かせます。入力系統の自由度はかなり高いといえます。
一方、世界と自分の体が密に結合しているVRでは、さまざまな制限があります。まず視点は基本的に一人称視点固定になります。また本格的な設備がない状態でVRをプレイする場合、自分は座ったままなのにゲーム内の体は歩きまわるみたいな齟齬もでてきます。
こういった条件を逆手にとって見事にゲームに落とし込んでいる作品が、「Last Labyrinth」や、「星の欠片の物語,ひとかけら版」です。
どちらも、プレイヤーは動くことができず、NPCに指示をだすことで謎を解いていきます。プレイヤーが動かないという設定のため、自分が座ってプレイしていても齟齬がおきません。見事にVRの制限を逆手にとっています。
個人的にはNPCを使用した作品は没入感を削ぐためよくないとおもっているのですが、これらの作品はNPCをメインにすえつつも、一定の存在感をだしています。
上記2作品は自分が動けないという齟齬をうまく解消していましたが、一人称視点のほうも、視界がせまくなることを活かして探索タイプのゲームにしたり、対戦で相手の背後をとることが重要なゲーム性にしたり、工夫次第でゲームに活かしていけるとおもいます。
セオリーのない世界で創作を楽しもう
こんかいはより具体的なポイントをみてきましたが、正直これらが絶対に正解かというと、なかなかそうも言いきれません。VRにはいまだに大成功をおさめた定番ソフトというものがなく、ソフトを作る際のセオリーができていないのです。
正解のない創作の世界で、仮説を立て、実装し、検証していく作業は大変でもあり、またスリリングで面白くもあります。ぼくらが足掻いた結果が次の時代のセオリーになればこんなにエキサイティングなこともありません。
とても挑戦しがいのある世界、それがVRのソフト開発だとおもいます( ̄∇  ̄ )