Yes Second Life

セカンドライフ向けWebサービスを作ってました。このブログではVR・メタバースのことを書いていきます

High Fidelityの基本的な操作

この記事は「セカンドライフ技術系 Advent Calendar 2015」向けの記事です。

www.adventar.org

前回の記事、High Fidelityを、ローカルマシンにインストールして接続する - Yes Second Lifeで、無事インストールが完了したので、今日はHigh Fidelityの基本的な使い方を見ていきます。

まずは画面右側のメニュー構成

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見慣れたものと、そうでないものが並んでいます。1個1個見ていきましょう。

ディレクトリ

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ディレクトリは、他のドメインへ移動するときに使います。ドメインセカンドライフでいうところのSimみたいなものだと思っておけば大体だいじょうぶです。

マーケット

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こちらは、セカンドライフでいうところのマーケットプレイスだと思っておけばオッケー。ただ、今はテスト段階ということもあり、どの商品も無料でゲットできます。また商品のオブジェクト自体も、クリエイター、所有者の情報や権限みたいなものは実装されていません。

メニュー開閉ボタン

下のボタン群の表示、非表示を切り替えます

アップロード

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自作のメッシュをアップロードできます。といっても、High Fidelityにアップロードするのではなく、別途適当なクラウドストレージ等にモデルを置いて、そのURLを入力します。アップロードできるのは、FBXかOBJ形式です。

Box作成

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単純なBoxを作成します。オブジェクトの周りにでる矢印をドラッグすると、移動、回転。オブジェクトの端点をドラッグすると拡大縮小できます。ちなみに移動の矢印は上下しかありません。オブジェクトを左右に動かしたい場合は、オブジェクトをドラッグしてマウスを左右に動かします。奥へやったり手前に持ってきたりしたい場合は、マウスを奥や手前に動かします。若干操作に慣れが必要ですが、セカンドライフで3軸の矢印をいったりきたりして位置を調整していた煩わしさはないです。

Sphere作成

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単純な球の作成。操作はBoxとだいたい同じ。

ライト作成

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セカンドライフでは、適当に作ったオブジェクトを発光させて明かりにしていましたが、High Fidelityでは単独でLightという種類のオブジェクトが用意されています。

テキスト表示作成

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セカンドライフが苦手だった文字の表示です。看板みたいなのが簡単に作れます。

Web表示作成

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セカンドライフではオブジェクトの面にWebを表示していましたが、こっちではWebという種類のオブジェクトがあります。

Zone作成

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High Fidelityでは、Zoneという特徴を持った空間を作成できます。Zoneでは光の当たり方や、遠景画像(空とか地平線とか辿りつけない部分を表現した画像)などを設定できます。Zoneに入るといきなり景色が変わったり、太陽の位置が違ったりと不思議な感覚ですが、色々工夫次第で使いどころがありそうです。

Voxel作成

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Voxelを作成してみたら、こんな感じのオブジェクトができました。Voxelについては、公式のドキュメントが整備されてなかったのでよくわかりませんが、小さい負荷で大きなオブジェクトを作れるようになっているぽいです。

セカンドライフと似ている部分もあれば、違っている部分もあって面白いです( ̄∇  ̄ )

High Fidelityを、ローカルマシンにインストールして接続する

1年ぶりですね。

毎年アドベントカレンダーの季節になると、更新されるこのブログ。
お察しの通り、この記事は「セカンドライフ技術系 Advent Calendar 2015」向けの記事です。

www.adventar.org

しかも、セカンドライフ技術系のアドベントカレンダーなのに、今回はHigh Fidelityというまだテスト段階のメタバースについて書いていきます。High Fidelityの創業者が、元リンデンCEOのフィリップさんということで一応セカンドライフとの関連も深いので、その辺は大目に見てくださいね。

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High Fidelity

トップサイトに書いてあるとおり、High Fidelityは、サーバ、クライアントともにオープンソースで開発されているメタバースです。リンデンラボの次期メタバース「SANSAR」は、少なくとも最初はクローズに開発される予定であり、はじめからオープンであることはHigh Fidelityの際立った特徴です。

github.com
ソースは、GitHubで管理されてます。

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Download - High Fidelity

High Fidelityのダウンロードページに行くと、Stack ManagerとInterfaceの2つがあることが分かります。サーバ側がStack Manager、クライアントのビューワがInterfaceです。ダウンロードしたインストーラを実行し、普通に進めていけば簡単にインストールできます。

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インストールが終わって、Stack Managerを実行してみたところ、何回かエラーダイアログがでましたが、無視して進めていきました。

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そしたらちゃんと、サーバが起動したので良しとします。
右上に「hifi://localhost」みたいなURLがあって、こちらをクリックするとInterfaceが起動します。

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なぜかアバターはロボでした。とにかくこれで、ローカルマシンでサーバを立ち上げ接続できました。もっと大変かと思っていたので、割りと拍子抜けです。

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適当にオブジェクトを作ってみましたが、セカンドライフとそんなには変わらない操作でつくれました。この辺はまた機会があれば、書いてみようとおもいます。

Pathfindingで、複数箇所を巡回させる

これは、セカンドライフ技術系アドベントカレンダーの記事です。

セカンドライフ技術系 Advent Calendar 2014 - Adventar
今回は、Pathfindingで複数箇所を巡回させてみます。

Secondlife Pathfinding機能 - llPatrolPoints - YouTube
複数箇所を巡回させたいときは、llPatrolPoints関数を使います。

次の例では、"target"という名前のオブジェクトを周りからさがして、複数見つかった場合に、そのポイントを巡回させます。

default {
    
    state_entry()
    {
        // オブジェクトをPathfindingのキャラクターに設定
        llCreateCharacter([]);
    }

    touch_start(integer num)
    {
        // タッチされたら、targetという名前のオブジェクトを探す
        llSensor("target", "", PASSIVE, 25.0, PI);
    }
    
    sensor(integer num)
    {
        // オブジェクトが1つの場合、パトロールできないので処理続行しない
        if(num<=1) return;
        
        integer i;
        list l;
        
        // targetというオブジェクト郡の位置をリストに格納
        for(i=0; i<num; i++)
        {
            l += llDetectedPos(i);
        }
        
        // オブジェクト郡を巡視する
        llPatrolPoints(l, []);
    }

    no_sensor()
    {
        // targetというオブジェクトが見つからなかったら何もしない
        llOwnerSay("No target in range.");
    }
}

巡回ポイントを1つしか指定しないとエラーになるので気をつけてください。llPatrolPoints関数には、リストで1つ引数を指定できます。

オプション 説明 デフォルト値
PATROL_PAUSE_AT_WAYPOINTS 巡回ポイントに到達した時、一瞬止まるようにする FALSE

前回の追跡に続いて、巡回を紹介しましたが、Pathfindingにはまだまだ色んな動作があります。気になったら調べてみると面白いですよ( ̄∇  ̄ )

PathFindingで、自分についてくるオブジェクトをつくる

これは、セカンドライフ技術系アドベントカレンダー向けの記事です。

自分についてくるオブジェクトは、今までも力技でつくれたんですが、最近追加されたPathFindingを使うと、とても簡単に実装できます。


Secondlife Pathfinding機能 - llPursue - YouTube

PathFindingは、直訳すると経路探索ですが、色んな動きができるNPC(ノンプレイヤーキャラクター)を作れる機能になっています。自分についてくる他にも、何かから逃げる動きをさせたり、特定の場所を徘徊させたりもできます。

何かについてくるようにしたい場合は、次のようにすればできます。

default
{
    state_entry()
    {
        // オブジェクトをPathfindingのキャラクターに設定
        // 実際には引数には色んなパラメータが渡せます
        llCreateCharacter([]);
    }
 
    touch_start(integer total_number)
    {
        // タッチした人の2m後ろを追跡する
        llPursue(llDetectedKey(0), [PURSUIT_OFFSET, <-2.0, 0.0, 0.0>]);
    }
}

たったこれだけ、llCreateCharacter関数で、Pathfindingのキャラクターとして設定し、llPursue関数で追跡させるように命令すればOKです。llPursue関数にもリストでいくつかの引数が渡せます。

オプション 説明 デフォルト値
PURSUIT_OFFSET 追跡対象からの距離 ZERO_VECTOR
REQUIRE_LINE_OF_SIGHT 動作するのに物理的に到達可能である必要があるか FALSE
PURSUIT_FUZZ_FACTOR PURSUIT_OFFSETからランダムで位置をずらす、0.0~1.0で指定 0.0
PURSUIT_INTERCEPT ターゲットの未来の位置を予測して動くか FALSE
PURSUIT_GOAL_TOLERANCE 実際のゴールからどれくらい離れてるのを許容するか 追跡者の大きさに比例

とても簡単に高度な動きが実装できるので、試してみると面白いとおもいますよ( ̄∇  ̄ )

セカンドライフの魅力

これはセカンドライフ非技術系アドベントカレンダー向けの記事です。

セカンドライフ非技術系 Advent Calendar 2014 - Adventar
ぼくにとっての、セカンドライフの魅力を語ります。

ルールがないこと

ふつうのMMOだと、クエストが用意されていたり、スキルシステムがあったりして、決められた手順を追ってゲームを進めます。しかし、セカンドライフには決められたことがなにもないので、自分でなにかを創りださないとなにも始まりません。それが逆に、なにか作れる人にとっては魅力になります。

まだ何もない世界で、自分が培ってきた技術力をつかって、何かを生み出していく、それがこの世界そのものを拡張していく、そういうエキサイティングな面白さがあります。

ルールを作り出せること

しかし、ルールがないと遊べないという人がいることも事実。というかそういう人のほうが多数派です。だったら何か自分たちでルールを作り出せばいい。セカンドライフには、ユーザ自身がルールを作っていけるほどの自由があります。
QuestMeister
これは、ぼくが作ったクエストマイスターというサイトです。このサイトで情報を入力して、セカンドライフ上でオブジェクトを配置すれば、誰でもクエストを作ることができます。自由すぎて何をしていいかわからない世界に、一定のルールを作りだせました。セカンドライフAPI、LSL言語がそれを可能にします。

仮想世界は今でこそ自由ですが、やがては色んなサービスがこうした枠組みを作っていき、最終的には手順を追って物事を進めていけるような世界になっていくとおもいます。まさになにもなかったWebで、掲示板、ブログ、動画サイトなんかが、フォーマットを与えていったように。

まだそうなっていない今、こうした枠組みをあーだこーだ考えて実装していくことが、高度な知的ゲームのようで自分には魅力的なのです。

子プリムに名前でアクセスする

2014年、セカンドライフ技術系アドベントカレンダーの1発めの記事です。

セカンドライフのオブジェクトは、いくつかのプリムをリンクさせて作成するわけですが、リンクされた子プリムには基本的に数値インデックスでしかアクセスできません。

llMessageLinked(2, 0, llGetScriptName(), "");    // 第1引数の「2」がインデックス

llSetLinkPrimitiveParams(3, [PRIM_FULLBRIGHT, ALL_SIDES, FALSE]);    // 第1引数の「3」がインデックス

しかし、子プリムの番号はリンクをやり直したりすると変わってしまいます。これではそのたびに、スクリプトの数値インデックスの変更が必要で不便。できれば子プリムの名前を指定してアクセスしたいところです。そこで、最初に名前とインデックスの索引をつくってしまう方法が楽です。

list linkPrims;    // 索引格納用リスト


// 索引を作成
createIndex()
{
    integer i;
    linkPrims = ["root"];    // インデックス0はルートプリムを表す
    for(i=1; i<=llGetNumberOfPrims(); i++)
    {
        // インデックス順に子プリムの名前をlinkPrimsへ格納
        string linkPrim = llGetLinkName(i);
        linkPrims += [linkPrim];
    }
}

// 名前をインデックスに変換
integer getIndex(string name)
{
    return llListFindList(linkPrims, [name]);   
}


default
{
    state_entry()
    {
        createIndex();
    }

    touch_start(integer num)
    {
    // 子プリムに名前でアクセス
        llSetLinkColor(getIndex("ResetButton"), <1.0, 0.0, 0.0>, ALL_SIDES);
    }

    // リンク変更時にリセット(いちごさんの指摘で追加)
    changed(integer change)
    { 
        if(change & CHANGED_LINK)
        {
            llResetScript(); 
        }
    }
}

この方法だと、機能追加でHUDにボタンを追加したりしても、子プリムの名前を変えないかぎりスクリプトのインデックスは変更不要でメンテも楽ですね( ̄∇  ̄ )

FacebookのOculus買収と、仮想世界への本気度

FacebookがOculusを買収して、けっこうなニュースになってるけど、「Facebookが資金をもてあまして流行りものに手を出したんじゃ」みたいな批判を目にしたので、FacebookのVRへの本気度について知ってる範囲で書いておきます。

2007年からのセカンドライファーならおそらく誰でも知っているCory Ondrjkaさんという開発者がいます。セカンドライフスクリプト言語、LSLなどを開発した方で、VR開発者の中でも非常にカリスマ性がある人です。Coryさんは、VRバブルにのって拡大するリンデンラボと反りが合わず、CEOのフィリップと口論してやめることになったのですが、2010年からFacebookで働いています。

そして、Facebookアプリでもある独自の仮想世界CloudPartyを、2012年6月に立ち上げました。OculusRiftの発表も2012年の6月でしたが、当然CloudPartyの開発自体はそれ以前から始められていたはずで、つまりFacebookはOculusがでてくる前から、VR技術には注目していたことになります。

なので、資金を持て余したとか、流行りモノだからという理由じゃなくて、いま自分たちの取り組んでいるVRに必要だと感じて、Oculusを買収したというのが自然な流れだとおもいます。

Facebookの本気度については、こういう理由で自分は疑ってないんですが、批判はもうひとつあります。いままでユーザが育ててきてオープンだったOculusが、Facebookによって不自由なものにされてしまうんじゃないかというものです。

こちらに関しては、正直よく分かりません。ぼく自身Facebookのクローズさがイヤで、アカウントだけ作ってあるものの全く使ってない状態です。ただ、FacebookのVR戦略にまず関わってるであろうCoryさんの性格上、あまりクローズにはならないのではないかと自分は楽観視しています。Coryさんはセカンドライフでユーザが作ったものがリンデンラボでなくユーザ自身に著作権が属するように積極的に働きかけました。そういったオープンな姿勢をみているので、変な囲い込みをするのが自分にはなかなか想像できません。

まとめると、FacebookのVRへの取り組みは本気であり、目的意識なくOculusを買収したわけではない。Facebookに買収されてクローズなかんじになるかは分からないが自分は楽観視しているというかんじです。